【政治部デスクの斜め書き】
4年半のワシントン勤務を終え、1月から東京勤務となった。米国ではなかなか読む機会のなかった日本語の本をなにから読み始めようかと思っていたところ、同僚から井沢元彦氏の「逆説の日本史」(小学館文庫)を勧められた。現在、第8巻中世混沌編を読んでいる。そのなかで、次の下りに目がとまった。
「政治家にとって最も大切な仕事は何だろうか?
国民が安心して活動できるような土台を作ること、というのが私の答えだが、それを行なうに際して最も重要な心構えは『決断する』ことなのである。
政治家とは『決断する』職業である、と言い切ってもあながち的はずれではあるまい」
1467年から11年にわたり、京都を中心に各地に戦火が広がった応仁の乱の要因を作った8代将軍足利義政の優柔不断ぶりを描いたなかで、政治家のあるべき姿を指摘したものだ。
足利義政はいったん弟の義視(よしみ)を後継者としたものの、後に実子の義尚(よしひさ)が生まれたため問題を抱えた。ここで決断をせずに問題を先送りしてしまったため、有力守護大名も巻き込んで対立が深まり、応仁の乱へと発展した。
足利義政といえば、邸宅として造営した銀閣寺で有名だが、浮世離れしているという点では鳩山由紀夫首相と似てなくもない。首相は実母から毎月1500万円をもらっても、「天地神明に誓って、まったく知らなかった」と言い張っている。26日の参院予算委員会でも、平成14年7月から21年6月まで、実母から受けた資金提供の総額12億6000万円を即答することができなかった。
自民党時代、武村正義氏や田中秀征氏らとともに、「ユートピア政治研究会」を結成し、政治腐敗や政官財の癒着を厳しく批判し、自民党を離党した首相だが、発言が事実なら自らの足下はまったく顧みてこなかったというわけだ。
問題を先送りした義政とともに、鳩山首相も米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をめぐり、昨年末に決めるべきところを連立政権維持を優先して、今年5月まで延ばした。その結果、問題解決をより困難にし、日米同盟に悪影響を及ぼした。
「女房役」の平野博文官房長官は最近になって事態の深刻さをようやく理解してきたのか、1月24日の沖縄県名護市長選で、移設反対派の稲嶺進氏が当選しても、現行計画であるキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)を排除しない考えを繰り返している。
与党内からの反発の声にもかかわらず発言を撤回しようとしない平野氏の姿勢をみていると、キャンプ・シュワブ沿岸部での決着に向けて、環境整備をしようとしているとみていいかもしれない。現実問題として、5月までにキャンプ・シュワブに代わる新たな移設先をみつけるのは非常に困難であるからだ。
現行計画の履行を求めている米政府も、首相が結局は受け入れるのではないかとみているから、忍耐強く待っている。
民主党内では早くも首相の「5月退陣説」が出ているという。普天間飛行場の県外・国外移設を訴えてきたにもかかわらず、結局受け入れを決めた場合、「政治責任」をとって自ら辞任するのではないかという見方だ。
それこそ無責任というものだ。義政は「彼の権限と地位をもってすれば決断は充分に可能と思われる問題を、先送りにしたために、害毒が広がった」(井沢氏)。義政のようにならないためにも、首相には政治家として決断する勇気と、決断を遂行する責務がある。(有元隆志)
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