日本医師会は2月5日、「国のありかたを考える―平時の国家安全保障としての医療」をテーマに、日医会館(東京都文京区)で医療政策シンポジウムを開催。宇沢弘文・東大名誉教授ら3人が講演した。
【複数の写真が入った記事詳細】 シンポジウムの冒頭、日医の唐澤祥人会長は、「経済社会の行方が不透明な今ほど、国家の骨格たる社会保障の強化に対するしっかりとした取り組みが求められている時はない」などとあいさつ。国民皆保険制度は、国民の命と健康を守り、安心して働くための社会が共有する「貴重な資産」であると述べた。
続いて、宇沢弘文氏が「社会的共通資本としての医療」をテーマに特別講演。
宇沢氏は「社会的共通資本」について、一つの国や社会のすべての人々の人間的尊厳を守り、市民的権利を享受できるような理想的な社会を作り、それを持続的に維持するために重要な役割を果たすものと説明。具体的には、「自然環境」「社会的インフラストラクチャー」「制度資本」の3つに分けられるとした。さらに、「制度資本の中で一番大事なものは教育と医療の制度」と述べ、「財産」として次世代に残していく必要性を指摘した。
武見敬三・東海大教授は「人間の安全保障と健康―我が国のグローバルヘルスへの貢献―」と題して講演した。
武見氏は、21世紀の国際政治では国境を越えた問題が噴出していると指摘。グローバルな保健・医療問題に日本が取り組むに当たっては、▽「官官協力」「官民協力」の制度化▽政策指向のグローバルヘルス専門家の養成▽グローバルヘルス外交の確立-が必要とした。
さらに、元外交官で文筆家の佐藤優氏が「日本国家のあり方と医療」と題して講演。
佐藤氏は、滞在歴のあるロシアの医療などに言及し、「国家と正面から対立しても、自分たちのネットワークによって自分たちを守ることができる組織がいくつかあれば、日本の民主主義が担保されると思う」と述べた。その上で、日医は政党や官僚とは異なる「中間組織」として、非常に重要な団体であるとの見方を示した。
日医の中川俊男常任理事が司会を務めたパネルディスカッションでは、武見氏と佐藤氏をパネリストに、「世界の中の日本と社会保障のあり方」について討論した。
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